アメリカの中間選挙が大荒れ模様で、正直羨ましい。拮抗する(現状では選択肢がないような状況らしいが)政党が2つあり、国民は政策論争を聞いて、自分が国を任せられる人を選ぶことができるちゃんとした「選挙」ができるからだ(その後の集計作業については日本の方が優れているようだが)。今の日本には選べるレベルに達している候補者がどれほどいるのだろう。棄権するのだけはやめようと思いながら、半ばやけっぱちの投票になっている地域が、たぶんほとんどなのではないだろうか。明治時代になり、わずか10年で選挙が行われた日本だが、今ではその当時の熱意も気概もなくなってしまった。
明治時代に固定化した新嘗祭
11月は、「文化の日」と「勤労感謝の日」と祝日が2日あって、子どもの頃は休みが多い月で嬉しかった。だが、よく調べてみると、3日は明治節、23日は新嘗祭と、どちらも天皇に関係のある祝日で、戦後なんだかわからない名前に変えられた日だった。加えて新嘗祭に至っては、新暦への移行と同時に本来、祝うべき日すらも動かしているいる。
歴史と文化は、どうしても時の権力者とともに変化していくものなのだ。だからといって、選挙の体たらくだけは受け入れ難い変化ではあるのだが。
収穫に感謝し豊穣を食す
というわけで、本来の新嘗祭とはどういうものなのか。もちろん、天皇がその年に収穫された穀物を神に供えお礼をし、天皇自らがそれを食するという儀式を指す。これにならい、全国の神社でも同様の儀式が行われて、全国の収穫を祝うものとされてきた。始まりは弥生時代まで遡ることのできる儀式だともいう。
本来、旧暦11月の2番目の卯の日に執り行われてきた行事だったが、新暦を採用した最初の年となる明治6(1873)年の旧暦11月の二の卯が翌年となってしまうため、新暦11月の二の卯であった23日に行われ、それが現在まで固定日として続いてきた。令和4年のカレンダーで言えば、旧暦11月の二の卯は12月16日になるが、翌年の新嘗祭は令和6年の1月4日となってしまう。さすがに2〜3年に一度は翌年の祭事となってしまうのは、休日指定をするには不都合だったのだろう。
卯の字は成長の一番よい時期を指す
ところで、卯の日に祭りをというのは、古くからある神社では残っている習慣である。
今では十二支が動物とより親密になってしまったので、漢字の持つ意味が薄れてきてしまっているが「卯」という文字は、「ぼう」と音読みし、「茂」という漢字と同意義らしい。つまり草木が地面を覆っている状態を意味し、成長の一番よい時期を指している。このほか卯の月(4番目)は種を蒔き始める時も意味している。
新嘗祭と卯の日の関係は、今ではすっかり忘れ去られてしまっているが、そんな卯の日の祭りで一番有名なのは、奈良の大神神社で毎月行われる「卯の日祭」だろう。これは第10代・崇神天皇が卯の日に大神祭を行ったことにちなんでとのことだが、大神神社に関連する社では卯の日に祭事が行われていることが多い。
京都の松尾大社では11月の卯の日に醸造祈願祭が、熊本の阿蘇神社では3月の卯の日に農耕祭事祭、大阪・住吉大社では5月の卯の日に創立記念日を祝うための神事が行われている。これらをみていると卯の日の持つ意味がわかるような気がする。
ちなみに卯の日は田植えをしてはいけない、という俗信が今もあるようだ。卯の日に稲を植えると「この年に取れるお米を食べられない人が家族で出る」と言われているらしい。また、田の神さまが休む日だから人も休めという意味だとも。
いずれにしても農耕民族という歴史の中で育まれてきた文化なのだろう。卯の日は神さまの休日なのである。
方角を表す十二支十二支は数字を意味したり時間や方角を表す時にも使われる。真北の子(ね)から始まり、真東は卯、真南は午(うま)で真西は酉となる。これが組み合わさって子午(しご)線(北極と南極を結ぶ線)と言い、東西を指す言葉に卯酉(ぼうゆう)というものもある。子午に比べて卯酉はほとんど世の中で見ることもないが…。
とはいえ、卯酉は共に五穀豊穣を意味する干支でもある。
11月といえば、上記卯の日に加え、関東では酉の市が行われる。やっぱり卯酉は繁栄の証、それを賑やかに祝うことのできる社会が何より大事である。そこんとこ、政治家の皆さんになんとか理解していただきたいと思う今日は11月の初卯の日である。
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