
秋田・道の駅 てんのうにあるスサノオ像
京都は祇園祭のまっ最中だ。ただでさえ暑い京都の地で、1か月も続けられる脅威のお祭りである。山鉾巡行、神輿渡御が行われたクライマックスの昨日、7月17日はお祭りの公式ホームページにアクセスできないほどの注目を集めている。いろんなお祭りがある中で、日本で1、2を争う歴史と規模と人気を誇るお祭りだから当然と言えるのだろう。これは、祇園社とよばれる八坂神社の祭礼である。素戔嗚尊(すさのおのみこと)をご祭神とする神社の総本社でもある。

八坂神社
荒神の代表格のスサ
最近ではゲームのキャラクターとしても有名になってきているようだが、この神さまの説明をするには、深田恭子が姉の日美子、市原隼人が弟の須佐役を演じて、映画化された「陰陽師Ⅱ」が一番分かりやすい。話自体は平安の出来事として描かれているが、日本書紀や古事記に記された神話が元になっていたことは疑いようもない。須佐は心優しい人ではあったが、(映画では父の憎しみのために)抗いようもなく人々を恐怖に陥れる怪物に変身するという話だった。まさに、スサノオはあのとおり、姉にとって、人々にとって荒神のやっかいものだったのだ。最も人間ぽい神さまでもある。
また、今年は「古事記」がブームになって、マンガ本などで読まれた方も随分いるとは思うので、詳しく紹介するのはやめておくが、スサノオの姉は、天照大神、つまり太陽の神さまでスサノオの乱暴狼藉に嫌気がさして、天岩戸にかくれた、という神話を持つ神である。もう少し付け足すと、アマテラスは今年遷宮で話題の伊勢神宮(内宮)の祭神である。
それからスサノオの子孫には、出雲大社の祭神・大国主命がいる。まぁ、日本中の神さまはどこかでつながっているということである。
東京でこのスサノオを祀る神社と言えば、「氷川神社」が第一だろう。

赤坂氷川神社(夏越大祓)
縁結びの神さまが3体
スサノオは、その人柄(?)からか神さまの中では、有名神の割には多く祀られてはいないように思う。何しろ伊勢神宮には125もの社があるのにスサノオを祀ってはいないのだ。だが、人気は高いらしく、伝統芸能や伝説などには多く登場する。ヤマタノオロチを退治して、赤坂氷川神社のもうひとりの祭神・奇稲田姫(くしなだひめ)と結婚する。このためスサノオは縁結び神でもある。八坂神社で結婚式が多く行われるのもこのためである。
加えて赤坂氷川神社には、大国主命も祀っているため、縁結び神が3体、同様に結婚式が多いのもうなずける。また、このスサノオの勇猛果敢な性格から、厄除け、勝運のご利益もあると言われている。土地柄なのか、赤坂氷川神社は外国人の観光客が多い神社でもある。赤坂のど真ん中にあって、どちらかというと鬱蒼とするくらいの緑に囲まれた境内は散歩にはちょうどよいのだろう。

荏原神社・天王祭に行われる海中渡御の一幕
ますます暴れ者になったスサ
スサノオは、暴れ者だったということから、その後神仏習合の神さまである「牛頭天王」といっしょにされてしまい、スサノオという神さまはますます乱暴ものの代表格になってしまった。そして、スサノオ(牛頭天王)はいつのまにか武士たちから好まれる神さまになり、スサノオを祀る寺社は歴代の為政者たちから篤い保護を受けるようになっていった。
徳川幕府はスサノオを何らかの封神に使ったと私は考えている。
江戸の東の入り口である東海道の第一の宿場・品川では、6月に天王祭が行われている。これはスサノオを祀る「品川神社」と「荏原神社」の2つの神社が行う大祭である。(つまりこの2神社は縁結び、厄除け、勝運のご利益が高い神社だということでもある。)また、蛇足ではあるが品川の先天王洲アイルの「天王洲」は牛頭天王からきているのだとか。

品川神社・天王祭でお神輿が階段を下る
実は、私はスサノオという神さまが好きである。わがままというか、好き勝手というか、まぁ神話に出てくる神さまたちは、みんな好き勝手なことをする人たちばかりではあるのだが。スサノオの正義感も自分勝手みたいなところはあるしで、今私たちが考えている神さまとはほど遠い人物である。だからこそ、悩める人間の気持ちがわかる神さまとして信仰されているのではないか、と私も勝手な解釈をしているのだ。
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