東京都にある鍾乳洞でマジにビビる

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訪問記

先週、アメノミナカヌシの記事を書いていて久しぶりにあきる野に行ってみようかと思い立った。この一帯にお住まいの方でもないかぎり、都民でも東京の西側についてはよく理解できていないと思うので、少し整理しておきたいと思う。JR中央線は立川駅で八王子方面(南側)と青梅方面(北側)に分かれる。八王子の先は高尾山を通り過ぎて中央本線、つまり山梨県へ向かう。青梅方面はその手前の拝島駅で、西の武蔵五日市駅へ向かう五日市線、ほぼ真北の埼玉・飯能や越生へ向かう八高線、この2線の間を青梅線が走っている。
青梅市・あきる野市・福生市・羽村市・瑞穂町・日の出町・奥多摩町・檜原村をまとめて、「西多摩」と呼ばれるが、これをJRラインで強引に整理すると、青梅線圏に福生市(分岐の拝島駅に最も近いので3線にまたがる)・羽村市・青梅市・奥多摩町、八高線圏に瑞穂町、五日市線圏にあきる野市・日の出町・檜原村となるだろうか。

これが秋芳洞の百枚皿

東京都の西のはじっこについて

西多摩のほとんどは山岳地帯で、道路も線路と同様に谷間を選んで走っていて、檜原村から北の青梅市へ行くのもあきる野市、日の出町を抜けて行く道をたどることになる(逆に奥多摩町経由か、あるいは隣接の山梨県に出る方が早い)。ある意味、現代の文化圏は山々で区切られているとも言えるのかもしれない。西多摩は東京都の広さの26.1%を占め、中でも奥多摩町は東京都最大の面積を有している。ほとんどは山だし、奥多摩町には東京都の水がめのひとつ奥多摩湖(人造湖)までもあるわけだが。

長々と土地の説明をしたが、つまり広すぎて神社めぐりをしようと思っても都心のようにいくつも訪ねることが難しい。しかも、地図上ではすぐそこなのに、道がなかったり崖や森に阻まれたり…。そういう理由から地図を片手に自分なりに経路を見つけておかないと行ったり来たりになってしまうのだ。車でなければいけないところもあるし、Googleマップで確認したら、バスを使うとしたら自宅から片道4時間近くかかるようなところもあるしで(延暦寺まで行けてしまう!)、西多摩散策には、綿密な計画と固い決心と体力作りが必須である、というのが自身に対する戒めだ。

鍾乳洞に行く気なんてなかったのに

というわけで、一念発起してあきる野市にでかけた。
あきる野市で行きたい寺社にチェックを入れたら35社にもなってしまってこんなに訪問できるはずがない。なので今回は都道201号沿いの寺社の探索に絞ることにした。ちなみに201号は「十里木」(富士山の裾野とは別である)から青梅市の「滝本」まで続く道である。だたし途中からは一般車不可の道となる。というわけで一般車が入れる最北の神社・養沢神社から参拝を始めたのだが、途中途中で気になる看板が目に入る。「○○鍾乳洞」と書かれたものがいくつも立っているのだ。
正直、私は福岡の平尾台や山口の秋芳洞に小学生になる前から行っていたせいか、どこに行っても鍾乳洞に興味がわかない。ただ、「東京に鍾乳洞? しかもいくつも?」方向音痴の頭の中で地図を描いてみるも、「江戸時代に石灰を切り出してたのこの辺り? 秩父って近いんだっけ?」と疑問は増えるばかりだ。結果、「えーい!見てこよう!!」
養沢神社から山へ入り込んだところにある「大岳鍾乳洞」へ向かうことにした。
運の尽きである。

「99.9ロケ地」ということは新たな嵐の聖地?

帰って調べたところ、西多摩は鍾乳洞の宝庫だった。隣接する埼玉や山梨にもいくつかあるが、一番ポピュラーで入りやすいのが奥多摩町の日原(にっぱら)鍾乳洞、あきる野市にも大岳鍾乳洞と三ツ合鍾乳洞と2つもある。余談だが、以前は養沢鍾乳洞、玉の内鍾乳洞、小袖鍾乳洞、倉沢鍾乳洞、大増鍾乳洞といった探索できるスポットがあったようだが、現在これらの鍾乳洞は立ち入り禁止になっている。
繰り返すが、私の鍾乳洞のイメージは秋芳洞である。全長1キロを車椅子を押していける観光地で、遠くに百枚皿やらクラゲの滝登りを眺め、まぁ女性がヒールにスカートを履いていても問題はまったくない。テレビのロケ地にも数多くなっている。今回も入場料を払う建物に「日曜劇場・99.9Ⅱロケ地」の掲示がしてあり、「ほほぅ、やっぱり鍾乳洞やね」くらいにしか思わなかった。ヘルメットをもらった時も「万が一に備えてやね」と心の中で、まだなめていた。
ちなみに、同行したアッシーは駐車場で待ってるという。まぁいい。一人で見てくるさ。
松潤がきた場所だ。知ってて通り過ぎるわけにはいくまい。

入り口

入り口

東京の鍾乳洞をようやく理解した鈴子

1周約300メートル、途中の見どころポイントは25カ所。
入り口で「途中でショートカットしたくなったら12番から19番へ進んでください」と
言われた時には、「そんなもったいないことするわけない」と思っていた。
しかし、入り口を見てちょっとビビった。
「立ってはいれないじゃん」
ちなみに、アッシーは先日坐骨神経痛になったばかり。腰をかがめて長く歩くのはたぶん無理だったろう。
「ついてこなくて良かったじゃん」まだそのくらいの気持ちだった。
写真を撮りながら、「いつまでこんなに狭いのかなぁ」と思いつつ、中腰のまま進むも一向に通路は広がらない。
だんだん理解してきた。たぶん、全部がこんなだ!

渡されたヘルメット!

渡されたヘルメット!

ヘルメットは必需品の鍾乳洞

「明るいだけましだし」と思ったとこでケータイが鳴る。うぇークライアントだー。ここで電話に出るのか一瞬悩むも無視することにした。しゃがむか中腰で長電話にでもなったらサイアクだし(ごめんなさ〜い)。
しかし、ケータイ繋がるんだ…ふむ、気温はそんなに低くない。たぶん、外よりは暖かい。でも岩をつかむ手が冷たい…。手袋は持っていたが、写真も撮らなくてはいけないし、きっとつかんだ岩に引っかかるんじゃないかとも思い素手のまま進む。
ビーナス殿とか夢の天国とか書いてあるが、どれがそう見えるのかよくわからず、とりあえず進む。
ショートカットしたい気持ちもわかるよー。一瞬、心は揺れたが「えーい!がんばれ!!」
夢見坂と名付けられた縦穴はどういう意味だー?
こんなブクブクのダウンコートを着た私に抜けられるのか?
なお、「一応かぶっとこう」と思ってつけたヘルメットだが、ここまでてたぶんもう5回はぶつけた。
みなさん、ここではヘルメットは必需品です。

次はもう少し準備して

300メートルを30分はゆうに要した私はヨタヨタと外に出た。
「こんなかっこ(救いはスニーカーを履いていたことくらい)のおばさんが一人でくるところじゃないなぁ」、きっと案内所の人は不審に思ったに違いない。
私もこんな場所だと知ってたら、もう少し準備してきた。せめてリュックサックとか…。こんなバッグ背負ってきてびっくりしたろうなぁ。
というわけで、軽装でチャレンジするには辛い場所である。
ただし、お子さん連れでのレジャーとしては楽しめるに違いない。転げ落ちてしまうようなスペースもないし、むしろ無防備なおばさんよりかは、運動着を着た子どもの方が安全に違いない。
鍾乳洞で体力の大半を使った私といえば、この後の寺社参拝に苦労した。この辺りの寺社は階段でしか登れないような高台に鎮座するところが多いのだ。もちろん綿密な計画も体力の温存も無視した結果である。

日原鍾乳洞

日原鍾乳洞

全国に広がる聖地としての鍾乳洞

さて、鍾乳洞は古くから神や仏が祀られ、修行の場とされてきた場所である。長い時間の中で形成されていく形が神の仕業と考えられてきたのだろう。大岳鍾乳洞も出口近くの壁に多くのお金が挟み込まれていた。ここを訪ねた人たちがお賽銭のつもりで差して行ったのだろう、あまり感心できることではないが。
全国を見回せば、鍾乳洞自体が神域とされているところもある。水の神、山の神、禍をもたらさないように仏像や祠が祀られてきたのである。
あきる野でいくつもの鍾乳洞が発見されているのは偶然ではないだろう。自然に対する畏怖と敬意を大事にしてきた歴史を持つ土地ならではのものに違いない。ただ、次はもう少し楽に入れる奥多摩町の「日原鍾乳洞」にしておこうかと思う。

秩父にある橋立堂は鍾乳洞の前に

秩父にある橋立堂は鍾乳洞の前に

最後に青梅市にある武蔵御嶽神社から山道をたどって養澤神社まで下ってくることができる(もちろんもっとハードになるが山を縦走して檜原村や奥多摩町へも行ける)ことを知った。ほぼ下り道でおよそ3時間ほどの道のりの日の出山ルートのほかにも、少し寄り道になるが、ケーブル側からでは参拝できない「奥宮」「男具那社」や「天狗岩」ルートがあって養老神社前にバス停もある(本数は少ない)。ただし、このルートに自動車が回り込める道はない。神山である御嶽山へと続く古くから存在する山道が、地元の各村から伸びているにすぎないのである。西多摩には古くからこの地の山や川、谷や滝を守ってこられた神々が、今でもあちらこちらに鎮座しているのである。まだまだ都内にはいくべきところが山済みだ。

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