実は先日、増上寺を訪れた際、驚きの発見をした。この日、次の約束があったので、浜松町側ではなく、神谷町駅から電車に乗ろうと東照宮を参ったのちに裏側に出たのだが、そこには、かつてのお堂ではなく美しく建て替わった宝珠院があったのだ。それを見て、自分でもびっくりするくらい、それを知らなかったことにショックを受けた。コロナ禍でも増上寺には幾度も訪れていたのに…。滞在時間が長くなってしまったおかげで、次の約束には遅刻をした。
季節ごとに美しい御朱印も
調べてみたら、もう3年近くも前に建て替わっている！つまり、2年以上訪ねてないってことね…すみません…。
実は、私は勝手に宝珠院を尼僧寺だと思い込んでいた。弁天さまを祀る増上寺の塔頭、ということからいつの間にか勘違いをしてしまっていた。今回、新しくなったお堂を見て、ますます勘違いを増長してしまったのだが、それくらい綺麗で整った空間になっている。女性誌にずいぶん紹介されたようだが、これなら当然かもしれない。ご朱印も季節ごと、各仏さまの縁日にちなんで変わったり、華やかな彩りのものも授与してくれるようだ。
以前の本堂
仏像がいつでも外から拝めるように
ずいぶん前ここを訪れた時、東日本大震災からかなり経っていたにもかかわらず、未だ修復されていない屋根やがたついたお堂の扉などを見て、気の毒に思った記憶がある。
あの頃は、なかなか改修費用が賄えず、ビニールシートで屋根や山門などを覆っていた寺社は多かった。結局、修復できずに、そのお堂を廃してしまったお寺もいくつも知っている。
そう考えると、それまで見ることもできなかった本尊の阿弥陀さま、薬師さま、お前立の弁天さまなどを、ガラス越しではあるがいつでも拝顔できるようになったお堂の再建はとても嬉しい。
閻魔堂の上部から閻魔さまが
閻魔さまが世間を睨む?
中でも、閻魔さまのお堂が素晴らしいのひと言。
宝珠院の閻魔さまには、司命と司禄という部下も一緒に鎮座している。この2人（?）は、閻魔さまの前に引き出された人間の生前の行いを読み上げ、記録する係とされている。また、中国の道教において司命・司禄は北斗七星の星のひとつで、人間の寿命台帳を管理し、行為の善悪を監視、寿命の増減を行う神とも考えられてきた。
この3体が並んだ姿が、東京タワー側の道路から正面に見えるように窓が開けてあるのだ。しかも閻魔さまのお顔だけが、宝珠の形になった壁に埋め込まれたガラスからのぞいている。まるで世の中に睨みをきかせているかのように。
すぐそばには1番の金地院が
宝珠院は、以前から何度かご紹介してきた「江戸44閻魔」の2番である。このお寺から正面道路を挟んだほぼ北側350メートルくらいのところに、1番の金地院がある。東京タワーから見ると、金地院が北東、宝珠院が南東に位置する感じか。
金地院と宝珠院を結んだ線上のちょうど真ん中あたりに「もみじ谷」がある。金地院の東側緑地にはメタセコイアの木が植えられていて、なんだか不思議な空間を生み出していた。やっぱり増上寺周辺はパワースポットなのだなぁ。
閻魔耳
「閻魔耳」で懺悔をすべき人は
話を宝珠院に戻そう。
再建とともに閻魔さまゆかりのユニークなものが壁に刻まれていた。「閻魔耳」と名付けられたものには「悪い行いを閻魔様に懺悔できます 閻魔様に打ち明けてお許しを乞いましょう」と書かれている。
私は、ちょっとその時自分の悪事を思いつかなかったので、懺悔できなかったが、ここで罪の告白をしておけば、三途の川を渡った時少し手加減してもらえるのか? そもそも懺悔するような人は、私はいい人だと思うけど。ほんとに悪い人は、自分を悪いと思わない──、って悪口言ってる私は、少し懺悔したほうがいいのかも…。
家康ゆかりの弁天さま
東京大空襲で伽藍のほとんどを焼き尽くされた増上寺に比べて、宝珠院のお堂はほぼ無事だった。
再建前、弁天さまが鎮座した赤いお堂や本堂などは古い建物が残っていたし、本尊・阿弥陀如来坐像や円珍作と伝わる秘仏・弁財天尊像、運慶作とも言われる薬師如来像も無傷で現在に至っている。
弁財天尊像は、徳川家康が深く信心したことから「開運出世大辨才天」とも呼ばれ、家康の命日である4月17日に毎年開帳されいて、港七福神の1柱としても知られる縁起のよい仏さまだ。
考えてみれば、東京タワーの足元にはこんなに多くの寺社が集まっている──というか東京タワー自体が増上寺の境内だった場所に立っているのだからあたり前か。だから、これほどまでに愛されてきたタワーなのかもしれない。と、東京スカイツリーを見る度にそう思う。やっぱり人気がいまひとつなのは、なんだかそういうパワーが得られてないからじゃあないかなぁ?
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